塑性変形,延性破壊に関する研究(松野)

・学会発表・論文業績等

これまでの主な共同研究先:物質材料研究機構(連携拠点推進制度),理化学研究所(共同研究契約),東北大学(国際共同利用・共同研究拠点),本田技研工業(株)

 

複雑変形と損傷の力学

自動車のような構造物の材料評価の際は規格化された材料試験が実施されます.引張試験のように,規格化された材料試験では材料に加わる力や変形量を簡単に導出可能となる単純化が行われています.しかしながら,実際に使われる材料はいろいろな方向に変形・破壊し,しかもその変形方向も破壊までに様々に変化していきます.規格化された材料試験では材料の実用に必要な特性を得ることができないことが多々あります.
 当研究室ではこのような複雑変形・破壊がどのような力学に支配されるのかその原理を探求しています.複雑変形を模擬した材料試験の開発や顕微鏡レベルの微視的観察,これらに数値シミュレーションを組み合わせることで複雑変形と破壊に関する力学モデルを見出し,構造物に組み込まれた材料破壊の事前予測や破壊が生じない材料設計へ展開をしています.

 

 

 

 

実験とシミュレーションの同化

複雑変形を模擬した材料試験では紙と鉛筆だけでは力や変形を算出することができません.数値シミュレーションを使って力や変形量を可視化していくことになります.このためには実験で得られる材料の変形過程の形状をそっくりそのままシミュレーションに落とし込む必要があります.こういった手法を同化と呼んでおり,当研究室では複雑変形を解析する上でこの同化手法を系統的に研究しています.シミュレーションは事前に材料の不良を予測するために用いられることが多いのですが,計測技術の一つとして組み込むことがこの研究の特徴です.兵庫県のSPring-8という大型放射光施設を使った力の測定やナノレベルでの3次元金属組織観察とシミュレーションを同化によって統合し,複雑変形に伴う幾つかの新たな知見を見出すことに成功しています.
 同化をさらに深化させ,破壊してしまった部位を直接コンピュータに取り込み逆変形解析を実施することにも挑戦を始めました.ここまで来ると材料試験というものは必要がなく,実際に使われて変形・破壊した材料からそのまま力学量が評価することができるようになります.所望の特性,機能を入力することで逆的に工程や材料組織の設計をする,という世界を目指して日夜(?)研究を進めています.

 

 

 

当研究室での研究テーマを検討される方へ

 近年の報道にもありますように,地方国立大を取り巻く研究環境は厳しいです.とりわけ金属材料を対象とした”固体力学”という古典分野はアカデミアにおいて不遇な時代となってしまいました.産業界からのニーズは極めて高いのですが,定年等で年々と大学の研究者が減ってきております.
 そのような状況の中,当研究室は比較的に恵まれた研究環境を維持しています.2018年から2023年の5年間における研究室スタッフ(1名)を代表とした獲得予算は年平均1000万円強となっており,研究室スタッフ(1名)を主著とした論文(英文)も分野トップジャーナルを含み年2,3本のペースにて掲載されています.修士の学生が主著となる英文論文も2年に1本というペースではありますがコンスタントに出すことができました.学会からも毎年学生が賞をいただけるまでになっております
 また,鳥取県内の公設試験場や東北大,京大,大阪大,物質材料研究開発機構,理化学研究所,大型放射光施設SPring-8にて実験を行える環境を構築しています.単独では到底実施できない高度な分析や解析をすることが可能です.
 鳥取県という立地の難はありますが,少なくとも国内の同分野においてはトップレベルの研究環境を学生に提供できているとの自負がございます.このHPをご覧になられた方におきましては,当校・当研究室を進路の一つとしてご検討いただけますと幸いです.